Airflow Analystで使える地形データの取得方法

こんにちは。はじめて風況シミュレーションを行う際に、対象地の3次元地形データを準備する方法でお悩みなることもあるかと思います。

風況シミュレーションは、地形や建物によって複雑に変化する風の流れを解析する手法です。

よって、解析結果の信頼性は元となる3次元情報の詳細度や精度に大きく依存します。

今回のコラムでは、風況シミュレーションで利用できる高精度な「地形データ」について触れたいと思います。

一般的なCFDの地形データ準備方法は、

1.国土地理院などで公開されているメッシュ標高データをダウンロードする
2.CADなどでメッシュデータを加工して立体形状をモデリングする
3.風況シミュレーションソフトで扱える形式(STL形式など)に変換し、それを格子生成ソフトでインポートする
4.格子設定ソフト上でスケールや位置を合わせて配置する

という手順で手間を要することが多いようです。

Airflow Analystでは、地形準備プロセスはどのようになるのでしょうか?

ArcGIS Proには、米国ESRI社の提供する世界中の最適な標高データがオンラインからダウンロードされ、すぐに解析に利用できる状態で提供されているのです。

結論から述べますと、Airflow AnalystではArcGIS Proを起動するだけで最適な地形データの準備が完了します。

ユーザは解析したい場所で計算格子を設定するだけで、その場所の地形を用いた解析が可能です。

さらに、その場所の樹木や建物の影響を考慮したい場合は、ユーザ自身が用意する必要がありますが、この建物や樹木データの入手方法についてはまた次回に触れたいと思います

今回のコラムでは、解析に使用できる地形データの入手方法について概観し、それぞれの特徴について紹介したいと思います。

地形データ取得の選択肢

1.ArcGIS「地表」データ

まず最初に紹介するのは、地形データの活用にあたって最も重要となるArcGIS Pro内に含まれる「地表」と呼ばれる標高サーフェスレイヤーを利用することです。

このレイヤーには、世界各国の標高データの中で最良のものが構成され、0.25m~10m程度の解像度で幅広い国のデータがシームレスに配信されています。

日本においては、国土地理院が提供している5mメッシュ標高と10メッシュ標高が含まれています。

ArcGIS Proを起動すると、ローカルシーンでデフォルトでこの地表が表示されているため、すぐに利用することができます。

特別な理由がない限りこの地形データを風況解析に利用することが最適解といえるでしょう。

データのダウンロードや変換作業といった準備作業が必要なく、世界中どこでもすぐに利用可能できるのも大きなメリットです。

実際のデフォルトの標高データの品質を視覚的に見てみましょう。

「標高」データに地理院地図をテクスチャとして表示させると、かなり高精度な地形データであることがわかります。

箱根の火山地形-複雑な火山性地形が再現されています。
六甲の斜面住宅地-人工的な宅地造成・道路形状も良くとらえられています。
知床半島の地形

ArcGIS Proで航空写真や衛星写真を重ねてみると、実際の土地利用・土地被覆の様子を確認できるのも有利な点ですね。

知床の地形に航空写真を重ねて表示した例

下記アドレスでは、ESRI社が配信している「標高」レイヤの各国のデータリソースの詳細が確認できます。

地表データの参照コンテンツ(外部サイト)

WorldElevation3Dに含まれる世界標高メッシュの種類は下記の地図のようになります。

日本では青のエリアが10mメッシュ、赤のエリアが5mメッシュで提供されています。

2.AW3D高精細版地形データ

AW3DとはRESTECが販売している高解像度衛星画像を用いて作成した標高データです。

複数の高解像度衛星画像を組み合わせて詳細な地形を生成可能な技術であり、

多くの衛星画像を組み合わせることで、複雑地形や都心であっても死角のない詳細な地形が作れるところに特徴があります。

解像度は0.5~2mと非常に細かく、過去に撮影されているエリアであることが条件となりますが、世界中で取得可能です。

位置・高さ精度的には1/2,500地形図と同等の品質があるとされています。

AW3Dの詳細な地形データ(0.5m解像度)のサンプル

一般的な風況解析では、2mといった詳細な地形起伏データが必要になることは稀かもしれません。

しかし、土木的な開発計画においてAW3Dは大縮尺地図の代替として概略設計に利用することも可能で、山間部の地形測量費用の低減につながるだけでなく、

その地形改変後の風の変化をシミュレーションで確認する際にも有効です。

また、海外プロジェクトで現地で詳細な地形データが入手できない場合にも重宝するでしょう。

AW3Dは当社でも取り扱っていますので、ご興味のある方はお問い合わせください。

3.ドローンで写真測量した地形データ

ドローンを使った空中測量技術では、DJI製などのドローンを利用して対象地を撮影し、ESRI社のSite Scan for ArcGISやDrone2Mapなどの製品を使用して画像解析を行うことで、非常に詳細な地形データを取得できます。この技術を使えば、解像度10cm以内の地形データを作成し、風況解析に利用できます。

Site Scan for ArcGIS(外部)

Drone2Map (外部)

ドローン写真から生成された標高データは、非常に鮮明で、岩、地形、建物屋根の形状や樹冠の形まで詳細な形状を取得できます。

このような詳細な形状に基づく気流解析を行いたい場合、例えば樹木を伐採したときに、対象地の風の流れがどのように変わるかなどを予測したい場合には、有効な方法になるでしょう。

ドローン撮影で作成した樹木の生い茂る地形データ

ドローン撮影による手法の利点は、撮影した日の地形を取得できることにあります。

災害や工事の直後、植生が生い茂った状態など、詳細な起伏データが重要になる場合に有効です。

一方で、ドローンの飛行が法的に制限される場所があることと、1日の撮影で取得できる範囲が数平方キロメートル程度であることなど、これら撮影条件が目的と適合していることが前提となります。

当社では、写真解析による地形生成の製品を提供しております。ご相談がございましたらお問合せください。

4.点群データからの地形データ

近年は航空機や地上でレーザスキャナを用いて取得された点群データがオープンデータとして入手できるようになりました。

このようなデータから地表に相当する点群を選別することで、高精度な地表データを得ることができます。

地表とそれ以外の点を識別する作業には技術が必要となりますが、ArcGIS Proの新機能にはAIを駆使して自動的に分類する機能も実装されています。

今後。点群データの提供エリアの拡大していくことで、点群というデータリソースを風況シミュレーションに利用できることになるでしょう。

まとめ

以上、地形データの選択肢を紹介しました。今回紹介していない他のリソースもあるかもしれません。

風況シミュレーションは、その結果に基づいて計画案を最適化していくことに目的があります。

より良い意思決定のためにも、ベースとなる地形データには高精度で労力を最小化できる手段を選択していきたいですね。

ご参考になれば幸いです。

Airflow Analyst評価版ダウンロード

Airflow Analystを体験してみましょう。
体験期間:約1ヵ月
体験版と製品版の違い:計算できる格子数に制限あります。
動作条件:
・ArcGIS Pro3.0以上
・OpenGLで動作するグラフィックボード
・メモリ12GB 以上推奨